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Work #18

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愛媛県北東部に位置する今治市。瀬戸内海国立公園を擁し、多島美の景観が美しいしまなみ海道によって広島県尾道市と結ばれている。波が穏やかな良港を持つことから全国有数の造船地区へと発展し、タオル工業も有名である。この建物は、ここ今治の市街地に家族4人が住む専用住宅として建築された。敷地は東面の道路から西に向かって細長く、水路を挟んで北側に広い庭を持つ邸宅、南側には7階建のマンションが聳え立つ。第一に誰もが考えさせられるこの敷地に対しての設計条件は、マンションからの視線対策である。彩光と通風を確保しつつ、プライバシーをどのように守るか。そこでこれらの条件を適える為に、建物の南側に全長40mのコンクリート製スクリーン壁を配置することにした。壁のサイズと構造については、諸条件に対して緻密な計算を行っている。構造的特徴は「浮壁」。壁自体を地面から浮かせ、室内から1.5mほど距離を持たせている。そしてもう一つの特徴は「コンクリート製の壁」。あえて重量のあるコンクリートを採用した事には意味がある。この壁が果たす重要な役割から、その構造的意味合いは、あくまで建物と同等のレベルでなくてはいけなかった。建物は平屋建とし、壁の強度と居住性の高さを追及した断面構造にしている。以上の考察を経て完成した浮壁の効果は次の通りである。マンションのどの階からも室内への視線を遮り、逆に室内からは敷地内に入る人の足元が確認できる。更に、十分な採光と通風を確保し、プライバシーと防犯の両面に対策を取りながら、室内環境を整える事を可能とした。浮壁と建物本体は重量バランスに則って強固な連結を施し、さらにエアコン室外機の格納も兼ねている。全面を白一色にした事についても、美観を考察した結果である。フラットに佇む白は、日中から夕刻へと変わる空の色を柔らかに捉える。夜は適所に設置された照明と壁の隙間からこぼれる室内灯によって、その趣を変える。〜時間の流れを素直に映し出すスクリーンとしての効果を持たせた。室内は、この浮壁を基に構成されている。東西に長い建物を、スキップフロアにより南北に2分割。大型多目的の収納スペースを豊富に設け、スッキリと暮らせる工夫をしている。各個室はその機能を有しながらも、視覚的に分断される事が無いよう境界壁を下げ、同一素材の木目の天井を張り巡らしている。更に中庭から敷地北側のプールまで、ガラス壁の連続による大胆な抜けを施した。スキップフロア上部のリビングダイニングからの眺めは開放的であり、北東に配したオーディオルームの様子も含めて、ここで生活することの贅を存分に感じる事が出来る。視界の抜けは、大きなガラス面以外にも室内のいたるところに仕掛けられている。地震対策も考慮して軽量化した屋根面。その所々に施した植栽がハイサッシに緑の頭をのぞかせ、その向こうに空が広がる。室内のどの位置からも緑と空を仰ぎ見る事ができ、更に室内にこぼれる光は、一日の時間的な移り変わりや四季の風景を粋に演出する。風に揺れる植物のシルエットや夕方の琥珀に似た色彩が壁面に映る様は絵画的だ。闇が落ちてからは灯りが揺らぎ、また別の趣も醸し出す。プライベートな居室は室内廊下で仕切られている。この廊下は、さながら路地の風情を湛え、中庭を挟んで東西に渡る一本道。奥行きの美観や居室振り分けの役割の他、風の通り道としての機能も併せ持つ。浮壁の下から取り込まれる風は、この廊下を介して室内を効果的に流れる。優しい路地風である。
この建物の完成は春。中庭の花桃の木から、時折小さな花びらが舞い落ちる。その情緒深い様子を愛でている時、室内に心地よい風が流れた。微かに春の香を纏っている。目に映る美しさには価値がある。しかし目を閉じても感じ得る心地良さは、何にも勝る豊かさであると思われる。
「内」に存在する「外」・「屋内に展開するもうひとつの屋外」〜その快適性とドラマ性を深く考察し続け、この建物の建築に取り組んできた。

用途:専用住宅
構造:RC造平屋建

施工地域
愛媛県今治市(日本)
施工年
2013
カテゴリー
戸建/別荘
カテゴリー
戸建/別荘
河口 佳介}

Architect

河口 佳介

K2-DESIGN・ARCHITECT&ASSOCIATES